2005年5月26日木曜日

ダブ(エ)ストン街道/浅暮三文

dabestonまた妙な本を読んでしまいました。シュールなファンタジー小説です。主人公が夢遊病の彼女タニアを追って、ダブエストンという不思議な土地に辿り着き、そこで様々な奇怪な経験をしていくというお話。この変てこさは、どこかで体験したような・・・と思ったら、佐藤哲也の「熱帯」という本を思い出しました。そういえば、同じく半魚人も出てくるし。
あり得ない設定で、あり得ない人々を描くこういうファンタジーは、しかし実は著者の物語へのバランス感覚や、細かい博学さなどが思いっきり浮き彫りにされます。確かに、この人、博学っぽいし、物語を読ませるための微妙な切なさというのを良く知っていると感じました。結局、ファンタジーってただの何でもありな妄想じゃ全然ダメなんですよね。ある意味、全人格的な表現であるのです。
タニアの足跡は、手紙という形で随所に現れます。手紙って、なんか切なくていいですねえ。今や、メールを送ればすぐに届くという時代、そしてインターネットで調べれば何でも分かる時代。あるものを探してさまよい歩く、それ自体が目的だなどという感覚は考えられない世の中。だからこそ、手紙で伝わる想いというのがアナクロながらも、印象深いイメージを与えるのでしょう。
実は小説中、ちょっと気になったことが・・・。主人公が「私」という一人称小説だったのに、ある部分、「ケン」と三人称になるときがあります。作者は意識的にやっているんでしょうか。いや、まあどうでもいいことですが。

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