2006年1月2日月曜日

音楽と言語/T・G・ゲオルギアーデス 訳:木村敏/講談社学術文庫

musiclang明けましておめでとうございます。
今年最初の記事は、音楽の本の紹介です。
恐らくアカデミックな場所にいる方には、有名な本なのだと思います。実際、この本自身はもう五十年以上も前に書かれたものです。
内容を簡単に紹介すると、音楽と言語の関連について、ミサ曲を題材に音楽史的に分析したというもの。しかし、その内容は言語の内容だけに止まらず、作曲の諸理論などにも言及していきます。また、後半はかなり哲学的な考察が中心になっていきます。正直言って、非常に論理密度の高い文章で、読むのには根気が必要です。
それでも、特に合唱に携わる人にとって、この本には興味ある内容がふんだんに書かれていると思います。特に序盤、ラテン語が持つ抑揚がどのように旋律に反映されているのかというあたり面白いし、音楽が発展しドイツにその中心舞台が移るにつれ、ドイツ語の持つ特質が音楽にどのように反映したのか、そのあたりの考察はとてもスリリングです。
これまでも、日本語の持つ言語構造がメロディを激しく規制していて、そこに西洋音楽との深い断絶があると、何度か私は言及してきましたが、一口に西洋音楽といっても、ラテン語とドイツ語は全然違うし、そこから生じる音楽も異なるものだということ、つまりはこの問題はどんな言語にも伴うものなのだという当たり前のことに、ようやく気付いたような気がします。
演奏の場にいる人だけでなく、合唱音楽を作曲しようとする人にも大きな示唆を与えてくれる一冊です。

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