2015年3月27日金曜日

リスク対応で自滅しないために

私が最近ついイラッと感じてしまうことを、なるべく一般化してみようと考えていました。そしてそれは、過剰なリスク対応と同根なのだなと思い至りました。

リスク対応の世間一般の話題としては、食品の異物混入事件でしょうか。
本来なら、その場で文句言ってお金を返してあげて終わりだった案件も、メディアでどんどん表沙汰にされることで、人々の印象の中に不衛生のレッテルが貼られてしまいました。
ウチの子も急にマック行きたくない、言い出しています。「今なら人いないよ」とか言ってもダメ。もう感覚的に拒否してます。子供だから仕方ないと思いつつ、ということは日本人全体がそういう子供っぽい反応をしているようにも感じます。

カップ焼きそばのゴキブリも衝撃的でしたが、あれはTwitterのような拡散の仕組みがあればこその衝撃であって、実は以前よりその程度のことはあったのかもしれません。

上記のような事案に対して食品提供側はお客サマの理解を得るために、工場を止めたり、過剰と思える謝罪をしたり、その社会的制裁ぶりには思わず同情してしまうほどです。
このようなニュースは、多くの人に業者に対して「反省しろ」と心の中で喝采させるのと同時に、誰もがいつ自分が吊し上げられるかわからないという不安を与えます。
次は自分があの場所に立っているかもしれない、という恐怖です。


かくして私たちはどこまでもリスク回避、責任回避の行動を取りたがるようになります。

私たちは人間ですから間違いはどうしても犯します。人によっては間違う多さも違うのでしょうが、誰もが完璧に仕事をこなせるわけではありません。
リスク回避の意識が強くなれば、間違いを処理する仕事がプロセス化され、間違いを放置しておくことが難しくなります。結果的に、このような組織文化は他人の失敗を糾弾する行動が賞賛されるようになっていくでしょう。
そして、組織内にある数多の間違いをお互いに指摘し合う文化が醸成されていきます。

このような文化はある程度正しいことです。
組織として良質なアウトプットを出すために、間違いはなるべく少ない方が良いのですから、相互で確認し、チェックすることで品質を高めていくことは、組織の価値を高めるために当然のことでもあります。

しかし、組織の価値を高める以上に、リスク対応の業務が増えてくるとすればどうでしょうか。それが過剰になっていくと、それは必ずしも良い方向には向かわなくなると思います。端的に言えば、余計な業務が増え、利益率が悪くなるからです。
営利企業ならまだしも、利益という概念が基本的にない公務員の場合、こういう事態はそうとうひどい状態になっているのではないかと推察します。


このような事態に対して、冷静に的確に業務量を分配するには、私には確率、統計的な手法は避けて通れないのではないかと思うのですが、ほとんどの場合、情緒的な反応のみで、誰か一人でも「許されない」と言えば、それが正義となってしまうのです。
そのような状況で、確率的な対応の話をしても「その一人にとっては100%だ」みたいな反応をされることがほとんどであり、結果的に確率論を否定されます。
それが業務効率向上の否定であることにまるで気が付いていないようです。

もちろん、自分がこれまで書いてきた内容、すなわち、確率、統計、効率、利益・・・こういう言葉は嫌われやすいですね。
分かる人には分かっているし、なるべく上記の言葉を使わずにうまく人を説得できる素晴らしい経営者もいるのでしょうが、それでもビジネスを続けていくためにこういう感覚が共有できなければ、継続的な事業運営なんて出来ないと思います。
昨今の有名日本企業が苦境に立っているのも、こういう考えが出来ない経営者が多いからではないかと私には思えてしまいます。

ちょっと話題が逸れましたが、リスクに対して発生確率を統計的にとりつつ、こういった案件がSNSで拡散されやすい昨今、むしろSNS対応、マスコミ対応みたいなものを別途研究すべきなのかもしれません。
こんなところで技術部長が引っ張り出されて正直なことを言おうものなら、火に油を注ぎかねません。外部に対する公表で必要なことは、内容の正確さを失わないまま、いかに大衆の感情をうまくコントロールできる表現をするか、ということが問われているのだと思います。


2015年3月21日土曜日

プリント基板製作に挑戦

久しぶりにMagicFluteの制作報告。

PICにはいろいろ苦労しましたが、一つずつ問題をクリアし、MagicFlute内に収める電子回路を製作。以下の写真がユニバーサル基板を使って自力で作った電子回路です。


写真は2台分写っています。左側から出ているケーブルは気圧センサに繋がっています。気圧センサは笛の吹き口の中に装着され、吹いた時の息の強さを気圧で検出します。

緑のユニバーサル基板の中にある二つの赤い基板は、左から加速度センサと、タッチセンサ。
そして、基板の一番右側にある薄緑の基板がCPUであるPIC18F14K50のモジュール。さらにそこからタッチシート用のケーブルと、フルカラーLEDへのケーブルが出ています。

基板は電源とI2Cを繋げる程度なので、それほど複雑な回路ではないのですが、それでもこの回路をユニバーサル基板で作るのには述べ数日かかっています。
老眼で小さいものが苦手になっているのにも関わらず、数ミリピッチの電子基板をハンダ付けするのはかなりしんどい作業。

私自身は基本ソフト屋なので、電子工作は嫌いではないけれど、そこそこの規模の回路になってくると正直楽したいと思ってしまいます。


ということで、プリント基板の製作に挑戦してみました。
プリント基板を作るのは完全に素人なので、そんな立派な回路でなく、今までユニバーサル基板で作ってきた程度の回路がプリント基板で作れれば十分。

プリント基板製作用のアプリを探していましたが、いろいろ試した結果、Fritzingというアプリを作ってみることにしました。
何と言っても初心者向けで、ドラッグ&ドロップと直感的なGUIですぐにそれっぽい基板図が作れます。

さっそく作った基板図がこちら。(初めて作ったので、やや恥ずかしいけど)


いずれも既存のモジュールを刺すだけなので、穴と線が引ければ十分なのです。表面実装とかあったらもう私にはお手上げです。

データをここまで作ったら、早速プリント基板を作ってみたくなります。
これもネットで検索して、いろいろな見積もりサービスを発見したのですが、国内のサービスはいずれも3万円程度。
たった数枚作って、しかも動かないかもしれない初めての基板を発注するのに、数万円はちょっと痛すぎ。

海外のサービスなら安い、という話はよく聞いていましたが、そういうリンク集から辿って見積もりをしてみるとビックリ!
桁が一つ違います。SpeedStudioというところで$35、OSH Parkというところで$24。
数千円じゃないですか。時間がかかってもいいので、一番安かったOSH Parkに発注してみることにしました。

以下、OSH Parkに発注してから、基板が到着するまでのメールでのお知らせを紹介しましょう。
2月28日:OSH Parkに基板発注。直後にPaypalで支払い。
3月1日:受注しました、というメールが送られる。
3月3日:データを工場に送った、というメールが送られる。
3月11日:基板が到着した、というメールが送られる。
3月11日:基板を送った、というメールが送られる。
3月19日:ウチのポストに届いた。

こまめに進捗をメールで送ってくれるのも信頼性がありますね。
ということで、実際に送られてきた基板はこちら。


OSH Parkはアメリカの会社のようですが、基板は中国で作っているのではないかと予想しています。
それにしても、たかだか3000円程度で中国で作って、アメリカに渡って、日本に到着、なんてよく元が取れるものです。それに国内の基板作成サービスは全部日本なのに3万円もするんですよ!

最近は電子回路をプリンターで比較的安価にプリントするような技術も出始めており、製造プロセスに大きな変革が起きているのを実感します。
電気製品の製造や流通のあり方まで、草の根レベルでどんどん変わりつつあることを思わず実感したのでした。